ユウはどこか元気がありませんでした。
いつものように明るく笑うこともなく、どことなく遠くを見るような
まなざしをしていました。
カナはそれを感じ取りながら、自然に話題を振ってみました。
最近見た映画のこと、街にできたカフェの話。
けれどユウの返事はどれも短く、どこか心ここにあらずという様子でした。
しばらくそんな会話が続いたあと、カナはそっと声をかけました。
「…ユウ、何かあった?」
ユウは一瞬だけ視線を落とし、それから静かに息を吸い込みました。
「…母が亡くなったんだ」
その言葉が、静かな夜に落ちました。
カナは驚き、すぐに何か言おうとしましたが、言葉が見つかりませんでした。
ただ、ユウの顔をじっと見つめていました。
ユウは悲しみを隠そうとしているようでしたが、それでも、かすかな震えが声に滲んでいました。
「そうだったんだね…」
カナは少し間を置いたあと、静かに口を開きました。
「ねえ、マハリシ・ジョーティシュにね、故人のためのヤギャがあるの。
故人の魂を進化に導くように祈るためのものなんだよ」
そのとき、ほんの少しだけ、ユウの表情にやわらかな光が差したように見えました。
「そうなんだ。ありがとう、カナ…。いいかもしれない。
お願いしてみようかな」
母への感謝と祈りが、静かに形になろうとしていました。